いまさら聞けないトリテの基礎テクニック




 この記事は、Trick-taking games Advent Calendar 2022の3日目の記事です。

 トリテ(トリックテイキング)ってボードゲームやってるとよく聞くけど、実際遊んでみると難しいですよね! いや、はいと言ってくれ頼む、そうしないと話が進まないんだ……そうそうそれでいい……ね、私も全然弱いです!
 弱いなりに私はトリテが好きで、理由は2つあります。「ちょっとしたコツがあって、それを覚えるのが楽しい」のと「基礎的なコツを少し覚えたら、あまり頭を使わずにだらだら遊べる」ことです。先に後者について言うと、カードと点数計算の紙かチップさえあれば遊べますから、真剣にやるものというよりは気軽に遊ぶ側面の強いジャンルです。もちろんコントラクトブリッジのように真剣勝負の側面がより強いゲームも中にはありますが、もともとは何百年も遊び継がれてきたギャンブルゲームです。
 そういう楽しみ方ができるかどうかの境目に「ちょっとしたコツ」があり、これを一旦覚えるとトリテに対する見通しは急によくなります。私が見た限りですが、トリテが苦手な方はこの基礎技術がわかる前に難しいゲームを遊んでしまい、あまり良い印象が残らなかった、そうしたケースが多いように思います。

 この記事では、その壁を越えるための基礎技術をご紹介します。
 え、弱い筆者にそんなことをドヤ顔で説明する資格があるのかって? 逆に考えるんだ、俺ぐらいに弱いプレイヤーでも知ってるコツばかりだから、難しい話はしないし覚えて損はない。ていうかこの手の話を意外と誰も書かないから俺が恥をしのんで書くんだ、いいね? 前提と主題は了解したね? だから強いプレイヤーのあなたには参考にならん記事だけど、内容を周りの人に広めてどんどん愛好家を増やすといいと思うよ? あと間違いはこっそりTwitterで教えてね? ああこちらの話ですお気になさらず

勝つゲームでは弱い札を捨て、負けるゲームでは強い札を捨てる

 トリテというゲームの目的は大雑把に言うと、1)沢山トリック(または特定のカード)を取る、2)極力トリック(カード)を取らない、3)程々にトリック(カード)を取る、の3種類です。1)はトリックに勝つゲーム、2)はトリックに負けるゲームと言ってもいいでしょう。3)は1)2)の混合ですから、1)2)の立ち回りを覚えることが大事です。1)の代表はコントラクトブリッジ、2)の代表はハーツ、3)の代表はスペードやスカルキングです。

 たとえばトランプのゲームで、前の人がリードスートのKを出します。手札にはそのスートのAがなく、2とQしかない。どちらもトリックには勝てませんが、同じスートをプレイ(=フォロー)しなくてはならない。
 この場合、勝つゲームであれば2をプレイします。2を温存してもトリックにはまず勝てませんが、Qを残しておくと後々勝てる可能性があるからです。逆に、負けるゲームであればQをプレイします。持っておくとトリックを取ってしまう危険性が高いからです。おそらく初心者が一番初めに覚える技術だと思いますが、これを押さえておくだけでも考える負担は減ります。

 逆に相手視点に立つと、たとえば勝つゲームで上の状況になったとき、他の人から出てくる札はそのスートの最弱札です。そのランク(数字)がいくつであるかによって、その人の手札の中身がだいたいは察せられます。2~5が出てきたらまだ余裕あるのかなとか、Qが出てきたら(AがあればAを被せるはずだから)もうそのスートないんだなとか、簡単なセオリーでも知っておくと手札読みにつながります。

勝つゲームでは小さく勝ち、負けるゲームでは大きく負ける

 上の例を少し変えてみます。前の人がリードスートのJを出し、手札にはそのスートのAとQだけがある。Kはまだ場に出ておらず、自分は最後の手番である。
 このとき、どちらを出してもトリックには勝ちますが、勝つゲームであればQを出すべきです。Aを残すと後のトリックでKが出ても勝てますが、Aを出してQを残すと誰かのKに負けてしまいます。ですから、Qを出せば1トリック自分が得する。相手より少しだけ高いカードで勝ちを狙います。
 逆に、負けるゲームではAを出して勝つべきです。どうせトリックに勝って損するのは同じですが、ここでQで勝つと次にAを出したとき、誰かのKがそのAに負けて逃げるチャンスを与えてしまいます。大きいAを出したほうが、自分が取るトリックが1少なくなります。負けるときは一番大きいカードを捨てるチャンスと捉え、失点を抑えるのです。

強いカードの枚数だけ数える

 上の例では「Kはまだ場に出ておらず、自分は最後の手番である」と仮定しました。
 もしKがすでに出ていれば、AとQは事実上連続しており、どちらを出しても結果は変わりません。ですから、各スートのハイカード(高位札。数字の大きいカードのこと)が出たかどうか覚えておくのはとても大事で、トランプだとA~10を数えておくとぐっと有利になります。52枚パックでのこのA~10を特に「アナー(honor)」と呼びます。呼び方は忘れていいです。
 全部のカードを覚える必要はなく、強いカード(各カードに点数があるゲームでは、点数の高いカード)だけを数えて、記憶の手間を減らします。各スート13枚中5枚は約38%なので、枚数が異なるゲームでも上から概ね3~4割を覚えておくのはひとつの目安でしょう。
 もし自分が最後の手番でなく、後ろにプレイヤーがいる場合……は状況によって変わるので、後回しにします。

プロモート(弱い札を強くする)

 次は、勝ちたいゲームで勝つ回数を増やす話をします。
 4人戦で手札は13枚配りきり、自分が第1トリックのリードです。切札(リードよりも強いスート)はないゲームだとします。手札にはスペードのA、Q、10、9、7があります。自分のスペードで極力勝ちたいと思う場合、どれをリードしますか?

 この5枚なら、9をプレイするのがひとつの戦術です。
 配りきりですから、自分が持っていないアナーのKとJは誰かが持っています。Aを出せば1勝はできますが、自分のQはこのままでは敵が持っているKに勝てませんし、10はJに勝てません。そのKとJを敵から引き出して、Qと10を必勝のカードに格上げできれば儲けものです。最高のパターンはJとKを別々の人が持っていて、2人目がJをかぶせて勝ちを狙って、その後ろがKをかぶせて勝ったときです。一気にA・Q・10で3トリック取れる見込みが高まりました(と言っても、この手札だと他の人がスペードでリードする可能性が低いので、一度他のスートでトリックを取らないと3トリックが夢と消えるのですが……)。
 JとKを同じ人が持っていたとしても、もしKが出れば少なくともQは必勝カードになります。たとえば2番目の人がJをプレイしてそのJがKに上書きされず勝った場合、Kもその人が持っている可能性が高いです。逆に2番目の人がQの上書きを嫌がってKをプレイして、Jが出てこなかった場合、そのJがどこにあるかは何とも言えません。フォローできなかった人の手札にはない、ぐらいしかわかりません。
 ところで、敵がJもKも出してくれなかったらどうなるかって? 9でトリックが取れるのだから最高です! 次は10をリードしてもよいし、今までに出たスペードの枚数によってはAをリードしてKやJを無理やり引き出してもいいと思います。私のレベルではこの辺からもう自信がなくなってくるのですが、そのくらいゆるく考えても十分遊べます。

 このように、本来勝てないカードが勝つカードに格上げされることを、プロモート(昇格)と呼びます。呼び方は覚えなくていいですが、考え方は覚えておくと得です。
 上の例では10と9は連続しているので、どちらをプレイしても実質同じです。以前ブリッジのセオリーで「どれをプレイしても同じ結果の場合は、その中で最低のカードを出す」と聞いた気がするので9をプレイしていますが、普通に遊ぶ分には10をプレイしても影響はないでしょう。
 負けたいゲームの場合もプロモートの考え方は同じです。低位札が2~6と出てしまうと7はもはや必ず負けます。ハーツの場合は余裕があれば低位札も覚えておくとよいでしょう。

自分のスートを枯らしたいとき

 あるスートが手札からなくなることを、スートが枯れる/スートを枯らす、と俗に言います。英語だとボイド(void)で、こちらのカタカナ語もよく使われます。

 自分の手札から枯らしたほうがいいのは、たとえばハーツのように負けたいゲームです。1つ手札のスートが枯れて、それを他人がリードしてくれると自分は好きなものを出せます。このときにAやKといった高位札を捨てたり、または自分が取りたくない高失点札、たとえばハーツならスペードQを出したりしておくと、あとで自分が失点するリスクを減らせます。
 でもスートって自分で意図的に枯らすことができるの? そのためにプレイ前のドラフト(交換)があるのです。短い(=枚数の少ない)スートはさっさとドラフトに出しておいて、1スート少ない状態でプレイできると段違いに楽になります。ただし、ハーツの場合だと低位札(7以下ぐらいですかね)は出さないほうがいい場合も多くて、理由は捨てたそのスートの高位札が1枚相手から来ると、そのスートをリードされたとき一気にやばくなるからです。

 勝ちたいゲームでも、自分の手札に長い(=枚数の多い)切札がある場合は、サイドスート(切札以外のスート)を枯らしたほうが大体良いです。理由は言わずもがな、そのスートがリードされたら切ってトリックに勝てるからです。あまり低位の切札だと他のプレイヤーにオーバーラフ(より高い切札を重ねられること)される恐れもありますが、高い切札をそこで使うのももったいない。高い札をあえて使うのは、カード点を集めるタイプのゲームで、自分の高得点の(でもトリックが取れるかは微妙な)切札をプレイするケースが主だと思います。

 逆に、枯らしたくないケースはどうでしょう? 次の節ではそこから見てみましょう。

エスタブリッシュ(スートの固め打ちを狙う)

 切札なしの勝ちたいゲームでは、スートを枯らしたくないことが多いです。スートをフォローできないとトリックの負けが確定し、相手に足元を見られてそのスートばかりリードされると、主導権=自分のリードを取れずに終わってしまいます。勝負ができそうな高位札をみすみす早いうちに捨てる必要はありません。

 ただ、後半で自分がトリックに勝つと状況が逆になります。勝った次のトリックで自分がリードするとき、どのスートも程々に中途半端なランクを持っているよりは、1スートを集中的に持っている、できれば数枚はAを含むアナー(高位札)である、という状況のほうが望ましいです。自分が長く持っているスートは、相手の短いスートだからです。特にAから連続して3枚以上持っていると勝ちの確定したカードで相手の手札を削れて、結果相手が誰もそのスートを持っていない状態になると、そのスートでリードすると2でも勝てるようになります。このように勝ちを確定させるかたちに手札の特定のスートを構築することを、エスタブリッシュといいます

 切札のあるゲームでも、切札を全員使い切ったらノートランプ(=切札なし)と同じなわけです。ですから弱い切札を残すだけでなく、絶対に勝てるサイドスートを残しておくのも大事です。絶対に勝てるというのは、たとえば序盤にA~Qが出てプロモートしているJや10も含みます。だからこそ、プレイされたハイカードを覚えておくかどうかで最後の1~2トリックの勝敗が変わることもあるし、それでゲームの勝敗が逆転することだってあるでしょう。

相手の切札を枯らす

 切札は自分が持ってると嬉しいけど、相手がもっと強い切札を持ってると厄介です。当たり前ですね。だからその切札はさっさと削ってしまいたい。
 そんなときは強い切札をリードして、相手の切札を無条件に1枚ずつ減らします。俗に「切札狩り」と呼ばれるやつです。上の例と違ってこの場合はAで狩るほうがむしろ推奨されます。なぜなら、強いからといっていきなりサイドスートのAをリードすると相手の弱い切札で切られる可能性がありますが、先に切札のAやKで相手の切札を狩っておいてからサイドスートのAをリードすればそのリスクを減らせるからです。ここで一番強い切札から使うのは、最初に自分がリードできる権利を持っているうちに、絶対負けないカードで切札狩りをしないと、次にサイドスートのAを勝ちに使える保証がないからです。

 トリックテイキングでは、約束されたトリックの勝ち数をなるべく増やしたいわけです。これが大原則です。強いサイドスートを弱い切札で落とされてしまうのはもったいないことです。切札があるゲームの場合は、切札を狩ってリスクを減らしてからサイドスート勝負に持ち込むほうが安全です。トランプだとだいたい3トリックあれば全部狩れることが多いかな?

フィネス(相手が持っていないことを期待する)

 最初のほうで棚上げにした例を、少し変えて考えてみます。
 「リードは9で、次の人はリードスートのJを出して、それから自分の番になった。手札にはそのスートのAとQがある。Kはまだ場に出ておらず、自分は最後の手番ではない」(下線が変更点です)。

 これが4人戦だとします。Kは誰が持っているでしょうか?
 もちろん自分以外の誰かだ、以外のことはわかりません。だったら左隣(最後の番の人)が持っている可能性は1/3だと考えて、Qを出してしまうのです。こうすれば2/3で勝てます。もちろん次の人が持っていたら負けてしまうのですが、それを怖れてこのトリックでAを出しても低い札で逃げられるだけで、手元のQはこのあとKに負ける可能性が残っています。であれば勝負に出る選択肢はあります。
 対面ペア戦の場合はもっと顕著で、パートナーが低い札をリードしてくれて、2番手のオポーネント(敵)がJを出したのであれば、Qは1/2で勝てます。2番手がKを出したら当然Aを出しましょう、ついでにQも勝てるカードに昇格しますから。ちなみに自分からQを打ち出すと、パートナーがKを持っていない限りは勝てないので、パートナーが強そうなスートを先にリードし、強い札ほど後から出すことは大事です。どうやってわかるのかって? そこはほら、ビッドでなんとなく見当をつけまして……。

 ブリッジでは、このように低位札からリードして向かいの高位札(ここではKの隙間が空いたAとQ)へとつなげて、最後の人が隙間のKを持っていないことに期待する手筋をフィネスと呼びます。ブリッジの場合は、ビッドした人の向かいは手札がすべて公開なので戦術として特に意味がありますが、ほかのゲームでも多少は似た効果が期待できます。

おわりに

 最初にも述べましたが、トリテが好きでない人がこの記事を読む確率はほぼゼロなので、布教の足しにしてください。私からは以上です。



<2022/12/03>


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