No.23 サンファン / San Juan
建築カードゲームの金字塔
作者 | Andreas Seyfarth アンドレアス・ザイファルト |
人数 | 2〜4人 |
プレイ回数・人数 | 50回/2〜4人 |
時間 | 30分 |
種別 | カードゲーム |
ゲーム難度(5段階) | 4 |
評価(10点満点) | 9 |
|
|
|
最近あまり売ってないらしいんですけど、建築のゲーム作りたいなって考えてる最中にふと紹介したくなったので。
中米プエルトリコの首都サンファンで開拓を行い、さまざまな建築物で街を発展させていく、っていうゲームです。
本作の2年前に『プエルトリコ』っていうボードゲームがありまして、そのカード版アレンジなんですけど、遊んだときの雰囲気はけっこう違います。というか『サンファン』のほうが簡単ですからこっちを先に遊ぶ人のほうが多いかも。なので、ここでは元ネタの『プエルトリコ』のことには触れず、独立したゲームとして説明してみます。
なお今は第2版まで出ているようですが、私が持っているのは初版です。
おおまかなルール
各カードに建物が描いてあって、これを自分の前に置く(建築する)と建物になります。誰かが12軒建てるまで遊んで、建物の合計点数がいちばん高い人の勝ちです。
ゲーム中にするのは建築だけじゃなくて、プランテーションでの生産や売却、参事会の開催、あと金鉱掘りもできます。
ゲームの進行なんですけど、テーブルの中央に「建築士」「監督」「商人」「参事会議員」「金鉱掘り」っていう5枚のタイルがあって、それぞれ「建築」「商品の生産」「商品の売却」「参事会」「金鉱掘り」というアクションを示してます。
誰かがタイルを1枚取ると、取った人から順番に全員でタイルのアクション(取った人だけちょっと有利になる)をやって、また次の人が別のタイルを取ったら全員でそれをやって、で全員が1回ずつやったらタイルを戻して……の繰り返しです。
建築のアクションでは、手札から1枚建築できるんですけど、コストも手札で1〜6枚を払わないといけないところがポイントです。建てたいものが2つ以上手札にあっても、両取りとはいかないことがあるわけですね。手札は7枚しか持てないのでギリギリです。
建物の点数はだいたい1〜3点で、たまに5点とかあります。あとコスト6の建物には「○○をしたら何点」っていう条件が書いてあって、これらの合計が最終得点になります。
他の4つのアクションも色々しますが、どれも基本的には「もらえるカードを増やす」か「良いカードを選ぶ」ためのアクションです。建築した建物はいろいろな特殊能力がありますが、ほとんどが手札を増やす/コストを減らすか、そのお手伝いをするためのものである、という点はアクションと大差ありません。
ですから一言でいえば「カードを引きまくって良い建物を建築する」というゲームで、そのルートがいくつかある。
というのが、このゲームのだいたいの見通しです。
カードを引く、それだけなのになぜか面白い
上で身もフタもないように書いちゃったんですけど、ゲームの骨格はバカみたいに単純で、カードを引くか建築するかの2つしかやることはないんです。なのになぜか面白くて、理由はやっぱり
「引き方に何通りかの手順があって、その手順がそれっぽい」ことだと思います。
たとえばアクションタイルの「監督」「商人」は2つで1セットを成していて、「監督」を取ると、自分の建てた最大5種類の工場から1つ選んで品物を置くんですね(品物も山札からのカードを置いて表します)。それから「商人」を取ると、好きな1工場の品物がめくった価格タイルに応じて売れる(=カードが引ける)。要は2アクションを使って手札を増やしてるってことで、考えてみたら面倒くさいんです。でもその面倒な手順がなんとなく「工場で生産して、それを時の相場で売った」感を出してくれてて、不思議です。
それを助ける建物カードに「水道橋」「マーケット」というのがあって、それぞれ「監督で1枚多く生産できる」「商人で売ったら1枚多く売れる」という相乗効果をつけてくれたりして、「水道橋を建てたおかげで生産効率が上がったイエーイ!」という雰囲気が想像しやすい。
アクション「参事会議員」は2枚引いて1枚取れるんですけど(タイルを選んだ人だけ特権で5枚引ける)、「知事官舎」を建てると知事パワーで取れるカードが2枚に増えます。有利な建物カードを選べるアクションが、2枚引けてカードを効率よく増やせるアクションに早変わりするんですね。参事会って最初は開催してもうまみが微妙なんですが、これを建てると急に開催したくなります。
「金鉱掘り」は選んだ人だけが1枚引けるんですけど、「金鉱」を建てる(発見する?)と、4枚めくって全部違うコストなら1枚取れるという山っ気満載の効果もあったりします。
そんなふうに、カードの引き方をあえて回りくどくすることで雰囲気を出している。そして建物に点数と効果の2つの意味合いがあって、効果がちゃんと雰囲気づくりに役立っている。これがすごいなあと思います。「手札を増やす」という1点だけでこんなに色々やれるか、という驚きがあります。
たぶんそのとき「ステップをわざと面倒にする」ことがゲームの演出としてすごく大事なんですね。
もちろん他にも建物効果はあって、建築コストを1減らせるとか、3種類集めるとボーナス点がつく記念碑とか、ちょっとしたフレーバーが随所にあります。とはいえ、どの効果も大枠では「カードを引くか建築するか」の二択からはずれない。
建物しか書いてないカードに複数の意味があるところもポイントで、建物自体にもそのコストにもなりますし、プランテーションの商品にもなる。「礼拝堂」を建てたら寄進の献金にもなる。テキストや絵を説明のために過度に増やさずカードをいろんな用途に使うことのすごさは、ゲーム慣れした今のほうがわかります。
優れたゲームだな、と思います。2004年初版ですから14年前ですか、でも今やっても全然古くない名作です。
私もゲーム始めてすぐの頃にレビューサイトを見て買って、それから数年ずーっとやってます。家で妻と50回以上は遊んだと思いますし、外出先でiPad版もよくやります。ゲーム慣れしてなくてもやれたのは、骨格が単純だからなんでしょうね。そしてカード効果が多いから何度も遊べる。好きな建築ゲームをひとつ、というと私は真っ先にこれを挙げます。
iPhone/iPadアプリでも遊べますから(カードや説明が英語ですが)、まだ触れてない方はぜひどうぞ。確かこの写真、私がおもいっきり負けたやつですね……。
こういう遊びごたえのある建築ゲームを作ってみたいと思いつつ、未だに違う切り口のアイデアを出せずに悩んでいたりします。
<2018/05/03>
←No.22 ハンザの女王(説明書感想) No.24 ピココ→
レビュー一覧へ トップページへ