No.19 コルトエクスプレス / Colt Express

また、つまらぬものを撃ってしまった…。

作者Christophe Raimbault
クリストフ・ラインボール
人数2〜6人
プレイ回数・人数2回/4、6人
時間60分
種別ボードゲーム
ゲーム難度(5段階)3
評価(10点満点)6

ゲームマーケットが終わったと思ったら、今度はドイツゲーム大賞のノミネート作品発表ですって。
時間が経つのは早いもんです。

あ、ドイツゲーム大賞というのは、ドイツのゲームジャーナリストの人たちが
毎年選んでる「その一年を代表するボードゲーム・カードゲーム」の賞です。
同様の賞は世界中にありますが、その中でいちばん歴史があって、ダントツの有名さです。

そして、ノミネート3作が発表されたところで、その一作
「コルト・エクスプレス」をタイムリーにレビューしちゃいます! どうだ! この自然な流れ!
たまたま今年遊ばせてもらっただけとは決して言わないぜ!

ルール

プレイヤーは列車強盗になって、ユニオンパシフィック急行に積まれた宝石や金袋を奪い合います。
5ラウンドにわたる戦いで、もっとも多く稼いだ強盗の勝利です。

ユニオンパシフィック急行。先頭の機関室には一番高額の金庫があり、保安官が守っています。

こちらは後部車両。周りのサボテンや石にはゲーム上なんの意味もないのが素晴らしい。(あと、コリラックマも関係ありません)

■準備

客車に、宝石と金袋を配置します。
先頭の機関車には金庫があります。保安官もいて、こいつは強盗の邪魔をします。
保安官が撃つ「流れ弾カード」もあって、これは列車の横に置いておきます。

各プレイヤーは一人ずつ、能力が異なる強盗を選びます。アニメ「ハウス世界名作劇場」を彷彿とさせる画風がいいですね。
最初に私が選んだのはシャイアンという女強盗で、相手を殴って落とした金袋をそのまま自分で掏ってしまいます。なかなか武闘派です。

各プレイヤーに、専用のアクションカードが配られます。内訳は全員同じです。
これを山札にしてよく切り、6枚取って手札にします。
他に、6発の銃弾カードと、金袋1個を置きます。

スタートプレイヤーを決めたら、その人の前にラウンドカード5枚を置き、ゲーム開始です。

■ラウンドの流れ

各ラウンドでは、まず<計画>を行い、次にその計画を<実行>します。

<計画>は、スタートプレイヤーから順に「手札からアクションカードを出す」「山札からアクションカードを3枚引く」のどちらかを手番で行います。
アクションカードは表向きに出し、すべて一か所に重ねます。
手番が一巡したら1ターンが終了し、これを4〜5ターンほど(ラウンドカードに書かれた分)連続で行います。
そうすると、出したアクションカードの山ができてますね。

計画が終わったら<実行>です。できあがった山を裏返して1枚ずつめくり、書かれたアクションを出した人が順番に実行します。
アクションは6種類あります。

横移動 … 1台隣の車両に(必ず)移る。屋根の上なら最大3台隣にまで移れる。
昇降 … 車両の中から屋根の上に、またはその逆に(必ず)移る。
強奪 … 今いる車両(同じ階)にある金品を1つ取得し、自分の前に所持金として裏向きに置く。
射撃 … 1台隣の車両にいる強盗を撃つ。屋根の上なら、1台以上離れた見える位置の強盗を撃つ。撃った強盗には銃弾カードを渡し、撃たれた強盗はカードを自分の山札に入れなくてはならない。
銃弾カードには意味がありません。つまりいらない手札が増えるということです。
格闘 … 今いる車両(同じ階)にいる強盗を殴り、その強盗が持つ金品を落とさせる。落ちた金品は列車のその階に置く。さらに殴られた強盗は、1台隣の車両に飛ばされる。
保安官 … 保安官コマを1台横に移動する(昇降はしない)。移動した階にいた盗賊は、強制的に屋根に登り、さらに流れ弾カードを1枚自分の山札に入れなくてはならない。
流れ弾カードも、上の銃弾と同じでただの邪魔カードです。

こんな具合にカードがあります。一番右から横移動、横移動、昇降、昇降、格闘です。

これで、1ラウンド終了です。
スタートプレイヤーの権利を左隣に移動し、自分のカードを全部シャッフルして手札を取り、次のラウンドを始めます。

だいたい何が起きるかはお分かりかと思います。
保安官を避け、列車を縦横に移動して、金品をいち早く強奪するようにカードを仕込み、
鉢合わせしたところで殴ったり、保安官を手配したりして敵を強制移動させ、隣から銃撃して邪魔カードを仕込む
というゲームです。心洗われますね。

保安官が来た!

■他にもイベントいろいろ

これだけでも思惑入り乱れてぐっちゃぐちゃになるのですが、さらに、

ラウンドカードの指定により、アクションカードを裏向きに置いたり、
2手番続けて実行したり、
ラウンドの最後に、列車の急ブレーキで盗賊が全員前の車両につんのめったり、


まあ、いろんなことが起こります。

実際やってるところ。段々状況がぐっちゃぐちゃになっていきます。

■ゲーム終了

5ラウンドが終わったら、手元に残った金品の額を合計します。
さらに、一番多く自分の銃弾を撃った強盗は「ガンスリンガー」の称号がもらえ、1000ドルが報酬に追加されます。

一番多く稼いだ強盗(稼ぎが同額なら、より撃たれていない強盗)の勝利です。

2回目のプレイで勝利。ゴーストという強盗で、最初のカードを必ず裏向きに出せるという反則な能力の持ち主です。

感想

丁寧なゲームです。よくできています。列車強盗というテーマがまずわくわくしますし、一人ひとりに用意された個性的なキャラクター、そして実際に組み立てられた列車、どれも目を惹きつけます。

その中で一番の魅力はというと、間違いなくこの立体の列車でしょう。列車の絵をボードに描いて、その上でコマを動かしてもゲーム的には成立します。が、実際に触って遊べる立体のモノが玩具としての魅力を高めてくれるのも、また確かです。たぶん、ドイツゲーム大賞にノミネートされたのはこの列車のおかげだと思います。ゲームに必要ないサボテンや岩のペーパークラフトが入っているのも、良い遊び心です。

キャラクターもクセのない絵柄で、万人向けだと思います。能力もキャラクターの性格とうまく結びつきそうな具合に考えられていて、どれも使ってみたくなるように造形されています。アクションカードも(内容に差はないのに)ちゃんとキャラクターごとに分かれているのも素晴らしい。

ゲームの内容ですが、こういう設定でワイワイとやるのかと思いきや、意外と緻密だったりします。
<計画>では一人ずつアクションカードを置いていくだけなんですが、基本的に前の人のカードは全て見えているので、だいたい誰が何をするかが分かってしまうんですね。それを踏まえて行動を考えないといけないので、やってることは案外思考的です。一手番ごとに考えながらカードを選んでいくので、思ったより淡々と、そしてシビアにゲームは進んでいきます。
手の届くところに宝があっても、相手に邪魔されて取れないことも結構ざらです。逆に、相手の行動を自分の銃一発で止めたり、相手の予想をすり抜けて金品を盗みとったときなんかは、本当に爽快です。宝を獲得する、銃を撃つというアクション自体の気持ちよさをちゃんと押さえているのも良いですね。


ところで、有名なカードゲームで「マンマミーヤ!」というピザ作りのゲームがあるのですが、「ピザの材料やレシピをみんなで1つの山札に入れる」ことで得点するという仕組みが、このゲームとよく似ています。
「マンマミーヤ!」の場合は、ゲームが進むにつれて山札のカードがどんどん増えるので覚えきれなくなり、開けたら予想もしないピザができたり失敗したりと、展開が割と派手です。レシピの分量や材料の数がちょうど覚えきれない程度になっていたり、レシピの完成で一気に材料が減ったりする。そういうざっくりした展開をあえて入れることで、パーティゲームとしてうまく成立しているところがあります。
一方「コルト」の場合はより緻密で、1ラウンドごとのカード枚数がほどほどなので、誰がどう動くかは結構読めます。<実行>でカードを開けて答え合わせをするときも、一人の行動が全員に大きく影響することはあまりなく、予想外の展開にはなりにくいです。「ああ、確かにそうなるね」という感じの答え合わせになり、微差をコツコツ積み重ねていくところがあります。その分難しいゲームになっていますが、それはそれでゲームの個性です。

で、あくまで私個人の感想なのですが、テーマやイラストの雰囲気が出しているパーティー感と、実際のゲームの緻密さとが、微妙に噛み合っていないような印象を受けました。
これだけキャラの個性が際立っていたり、列車っぽいイベントがあったりするのですから、もっとドンパチやらせてほしいのですが、前述したゲームの特性上、あまり派手な展開にならないようになっています。当然それはゲームバランスをよく調整したことの裏返しなのですが、終盤の逆転劇などは起こりにくく、正直物足りないところはあります。
もちろん、緻密に行動を詰めていくこと自体には、楽しさはあります。ただそれにしては、例えばガンスリンガー(一番多く撃った人)が1000ドルもらえるルールなんかはかなりざっくりしていて、2回遊んだときは2回ともこれを取った人が勝ちました。パーティーゲームに寄せたいのか、思考ゲームに寄せたいのか、射程を定めきれてないように私には思われました。

おそらくこのゲームは、ファミリー向け、特に子供向けとして作られているのだと思います(テーマやイラストは、強くそれを示唆しています)。あまり相手のカードを気にしすぎず、計画が狂うことでの一喜一憂を楽しむ、そういう楽しみ方をするゲームではないでしょうか。
ただ気になったのは、ゲームボリュームの割にはルール量が多めで、かつ細則(移動距離のルールなど)も結構あることです。行動の早見表を別途用意するか、ルールに慣れた人がいるかしないと、初見では間違えるところもありそうです。その辺り、完全に初心者向けとは言い切れないところがあります。

楽しいことは楽しいです。テーマやイラストは非の打ち所がありませんし、ゲームもよく調整されていて安定した面白さがあります。ただ、意地悪な言い方をすると、ゲームの方向性を振り切ってないあたりがちょっと優等生すぎるかな、という気はしました。


ドイツゲーム大賞のノミネート作品に入ったということで、大賞を取る可能性は十分あると思います。よく作りこまれています。他の2作(「街コロ」と「ザ・ゲーム」)は未プレイですが、ゲームの概要を見る限りで、最も「大賞作品っぽい」見た目をしているのは確かです。楽しさの質が若干渋めというか、見た目と比べてプレイ感が硬派という点がどうでるか。
ともあれ目下の話題作のひとつには違いありませんから、見かけたら遊んでみて損はないです。

プレイ時間は公称40分ですが、カード選択に結構悩むので実際は60分ぐらいかかります。人数は多いほうがドンパチ感は出るのですが、ガンスリンガーが露骨に強くなってしまうため、4人ぐらいがいいのかな、と思います。

<2015/06/13>

追記(2015/7/6)

本作は、2015年のドイツゲーム大賞を受賞しました。おめでとうございます。
「街コロ」が日本発のボードゲームということで期待していましたが、惜しくも受賞はならず。
本作の見た目の華やかさ、訴求力、ゲームとしての完成度などを考えると、客観的にはとても妥当な結果だと感じます。

この受賞で遊ばれる機会も増えると思いますので、どんどん広まるといいですね。

個人的には若干面白みは薄いというか「普通のゲーム」と感じますので、評価を7→6に変更しました。

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