No.27 アルナックの失われし遺跡 / Lost Ruins of Arnak

とにかく資材が足りない

作者Mín & Elwen
(Michaela "Mín" Štachová, Michal "Elwen" Štach)
ミン&エルヴェン
人数1~4人
プレイ回数・人数2回
時間90分
種別ボードゲーム
ゲーム難度(5段階)4
評価(10点満点)6

 「デッキ構築でありワーカープレイスメントでもあってなんやかんや」という、やたらと盛り盛りな新作の噂を昨年(2021年)聞いてやってみたかったんですけど、なかなか機会がありませんでした。
 カズマさんは最近BGA(Board Game Arena)でよく遊んでて、これも入ってたのでよしちょっくら試してみんべと触ったのですがルールがよく理解できないまま終わってしまい、先日ようやくボード版を友人に遊ばせてもらいました。Lizard Templeという拡張を入れましたが、ルールはほぼ変わらないはずです。

 Czech Games Editionの2020年の作品です。作者のミン&エルヴェン(Mín & Elwen)というのはデザイナーとしての共同名義で、ミハエラ・シュタホヴァとミハル・シュタッハというCzech Games Editionの社員でもあるご夫婦が制作されています。ドリス&フランク(Doris & Frank。ドリス・マトイスとフランク・ネステルというドイツの制作者夫婦)と同じような感じですが、その例えも知名度としては大差ないので忘れてください。

だいたいのルール

 遺跡を発掘して研究したら点数が入ります。遺跡にはヤバイ生命体が多数出現するのでアイテムでいい感じにやっつけてください。要約は以上です。

 各自ワーカー2体と個人デッキを持ちます。ラウンドの最初に手札が5枚になるようカードを引き、ワーカー・手札・資源を使ってアクションを行っていきます。ゲームは5ラウンドです。
 ボードには遺跡エリア、研究トラック、カードエリアの3つがあり、概ねこれに対応する形で手番アクションがあります。アクションはざっと4種類です。
  1. 遺跡を探索する
  2. 研究トラックを進める
  3. カードを買う
  4. 手札を使う

  1. 遺跡を探索する
  2.  ボードの遺跡エリアの、1つのスポットに対応する交通手段(飛行機 > 車・船 >徒歩)=移動コストを手札で支払い、ワーカーをそのスポットに置いて資源をもらいます。交通手段の上位は下位を兼ねます。ワーカーはゲームを通じて2人固定なので各ラウンド2回しか打てませんが、他の場所ではワーカーを使わないのでそれほど足りない感じはしません。
     遺跡の未踏スポットを探索するには、資源としてコンパスを支払います。未踏スポットからは必ず激ヤバ生命体ボス敵が登場しますが、手持ちの資源を金とか矢じりとか支払うとなんか倒せます(敵によって異なります)。倒したら単なる上位の資源獲得スポットになります。
     ボス敵を倒すと小さいトークンがもらえて、これを使って個人ボードの得点スペースをつぶすと資源がフリーアクションでもらえます。地味に強い。

  3. 研究トラックを進める
  4.  調査コマ(虫眼鏡)と論文コマ(ペーパー)があり、それぞれ進むと資源や特典をもらえるほか、ゲーム終了時に点数が入ります。論文コマは調査コマより先に行けず(そりゃそうですよね、調査せずに論文書いても査読ではねられるし)、点数も少ないですが、その代わりもらえる特典が豪華です。フリーアクションとして打てる助手が雇えたり、最初は銀の助手なのが金の助手にアップグレードできたりします。助手って任期短いんだろうな……大変だな……いやこの話はいいです。
     上の段に進めるためには所定の資源を支払うだけで、ワーカーはいりません。だからアクションの早取りという意味では楽だったりはします。

     今回追加したLizard Templeという拡張では、研究トラックの内容が変わります。少しだけ得点をしやすくなったり、ここにも激ヤバ生命体が登場したりします。バランスは良くなっているようです。

  5. カードを買う
  6.  6枚のカード列から1枚を購入します。カードにはアイテムと遺物の2種類があり、アイテムはお金を、遺物はコンパストークンを支払って買います。
     アイテムは買うとデッキの底に置き、遺物は最初に一度効果を発揮してから捨て札に置きます。カード列は最初アイテム5枚:遺物1枚の配分で、ラウンドが進むとアイテム枠が減って遺物枠が増えます。よくできてますね。
     どのカードにも交通手段・使ったときの効果・点数があり、買って丸損はしないようになっています。

  7. 手札を使う
  8.  カードをプレイして効果を使います。稲妻マークの効果はアクションを消費しません。資源をもらえたり、移動コストを減らしてワーカーを置けたり、割引で買物したり、敵を爆破したり、いろいろです。
     手番が終わっても手札はラウンド終了時まで引けず、ラウンドが終わるまで山札の再作成はありません。だからそんなにデッキの回転はよくないです。
     なので、ワーカーも資材も手札もなくなると、やれることがなくなります。そしたらパスしてラウンドから抜け、全員が抜けたら次のラウンドに進みます。

 5ラウンド終わったら点数計算です。点数は討伐したボス敵、研究トラック、手札含むデッキのカード、あとちょこっと個人ボードから入ります。

感想

 普通に面白いです。ルール説明含めて90分ほどで遊べて、しっかりゲーム遊んだ感があります。初心者が遊べる代物ではありませんが、ゲーム慣れした人にとってはちょうどいい中量級でしょう。
 ただ、要素てんこ盛りで面白さが掛け算して爆裂するかっていうと、微妙です。個々のシステムが足し算にとどまっていて相互作用がそれほど強くないため、ワーカープレイスメントもデッキ構築も薄味に見えます。デッキ構築の色を強めるとダウンタイムが延びすぎて2時間でも終わらないからやむを得ない面はあります。良い評判をあちこちで聞いて期待していましたが、その期待を超えるほどではありませんでした。

 これは意図的なデザインだと思うのですが、点数源は色々あるように見えて、資源のセットコレクションただ一つです。お金、コンパス、発掘品3種類、カードの移動手段。敵を倒すのも研究トラックを進めるのもカードを買うのも、すべてこれらの資源を指定どおりに支払えば達成するので、やっていることは実質的には資源の収集とセット支払いだけです。
 だからこのゲームは見通しが良いです。目前の資源を手なりで集めても何かしら点数にはなりますから、着手を間違えてゲームにならないことはほぼないでしょう。ですが、ボード上の場所を変えて同じことを延々やっているにすぎないため、プレイ中の緊張感は高くありません。ゲームデザインとしての目先の変え方が上手いのでプレイ中はあまり自覚しませんが、意識の底では中盤ちょっぴり飽きてきます。
 資源をやりくりするパズルに考え込むゲームで、他人とのインタラクションはドミニオンよりも少ないです。インタラクションが少ないというのは、他人のプレイに干渉できるできないではなく、他人のプレイが気にならないという意味です。それはそれでゲームの魅力には違いありません。しかし、システムが多くアイコンも数が多いため、最初に覚えることは多いです。その負荷に見合う面白さを感じられたかというと上に述べたとおりで、インタラクションが少ないならもう少し複雑な得点行動をやりたいです。難しくはありませんが煩雑です。カードを覚えてくればその煩雑さもなくなるのだと思いますが、自分からリプレイしたいほど強い面白さではありません。緩い面白さです。

 それでも、ゲーマーが好きな要素を詰め込んでいるので嫌いではありません。カードの相互作用をうまく使えたら面白さはアップするでしょうし、すべての得点を綺麗には取れないようになっているのでどの要素に注力するかを計画するのは楽しいです。私は資源を管理する系があまり得意でないのでこういう感想になってしまいましたが、誘われたらまた遊びます。ルールを覚えれば上記のような欠点は減殺されるでしょう。
 拡張セットはカードやトラック等、選んで色々差し替えられるらしく、おそらく追加したほうがバランスは良くなると思います。基本ゲームを一度やって気に入ったら、ついでに買うといいんじゃないかな。
 Czech Games Editionは、こうした割と重めの力作を出してくる印象があります。面白いパブリッシャーで今後も注目したいです。



<2022/04/01>


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